2008年10月30日に注目の判決が下された。
経過
Bilski出願の発明は、いわゆる「ヘッジ取引」に関するアイディアです。そこでは、コンピュータ等のハードを利用する限定は含まれていません。購入者、販売者、定価、取り引きを行う、などの限定があるのみです。
審査官と審判部は共に101条(発明の成立性)の「Process」に該当しないとして発明の成立性を拒絶しました。Bilski等はこれを不服として高等裁判所(CAFC)へ提訴しました。いわゆるビジネス方法発明について、ドラスティックな判決が出る可能性が指摘されていました。
今回の判決(多数意見)
過去の数多くの最高裁判決を取り上げ、それらが主張しているのは、結局、「上記101条のprocess発明と認められるのは、machine-or-transformation testに合格した場合である」と解釈しました。
その中で、いわゆるビジネス発明の大量出願のきっかけとなった、ステートストリートバンク判決で触れられた、「useful、concrete、tangibleであれば、ビジネス発明といえでも排除する理由は無い」というルールは、発明の成立性を判断するには不十分であり、より明確な上記testが適切であるとしました。
多数意見は、このtestに照らして、Bilski等の発明は、なんら物理的な変形(transformation)或いは物理的存在を示す電気信号の変化(transformation)を生ぜず、単に権利の変更(transformation)などを定義しているに過ぎないと指摘して、成立性を否定しました。
他の裁判官の少数意見
DYK等裁判官:1973年当時の憲法まで遡り、その時点の判決などから、processは製品、機械、物質の利用又は作成プロセスに限る解釈をすべきという立場から、多数意見に賛成し、Bilski発明を否定しています。
NEWMAN裁判官:多数意見は内容が不確かであるためこれまでの特許を不安定化し、これからの技術革新への過度の制約である、として多数意見に反対しています。
MAYER裁判官:米国の憲法の特許制度は、ビジネスの発展ではなく、科学と技術の発展を振興するために設立されており、Bilski発明を否定すべきは勿論、ステートストリートバンク判決も否定すべきである。多数意見の結果は良いがそのtestでは不確かであるとしています。
RADAR裁判官:多数意見の結果には賛成するも、その理由には反対。米国の101条は、自然法則、自然現象、抽象的アイディアの3種類を不成立としている(Diehr判決)。それ以上、今回のmachine-or-transformation test といった、却って混乱をまねくテストは導入すべきでない。Transformationとは何かなど新たな疑問が出てくる。また将来の革新的な技術の登場に対して制約ともなり得る。そもそもBilski等の発明は抽象的アイディアであり、それを根拠に否定すべきであると主張。
今回のCAFCの多数意見には色々問題がありそうで、さらに、最高裁の判断が欲しいところです。